「アンブロークン」著者の言う「大森捕虜収容所は奴隷収容所」は事実なのか?
- 2015/05/31
- 10:27

前回、大森捕虜収容所でのクリスマス慰安会で上演された「シンデレラ」を紹介した。今回はその劇の現実と、原作、映画の違いを書く予定だったが、必要な文献が一つまだ届かないので、先に大森捕虜収容所の労働、食糧問題について書きたい。アボリジニの奴隷を手に入れ、記念撮影する白人「アンブロークン」の著者、ヒレンブランドは、大森捕虜収容所のことを「他のほとんどの収容所と同様、奴隷収容所であった」と書いている。ヒレ...
大森捕虜収容所で捕虜たちのために開催されたクリスマス慰安会の演劇「シンデレラ」。「捕虜を奴隷のごとく扱う日本人」という「アンブロークン」の描写に、少しは疑問をもってほしい
- 2015/05/22
- 19:15

以前このブログで、大森捕虜収容所での1944年のクリスマスに、捕虜たちに出された食事の話をした。大森捕虜収容所の八藤主計軍曹が、国内の食糧事情が悪化する中、せめてクリスマスくらいは捕虜たちに牛肉を食べさせてやりたいと、食肉市場の人に泣きついてなんとか牛肉塊を手に入れ、捕虜たちに振る舞うことができた。その50年後、当時大森捕虜収容所にいたマーチンデイル米陸軍少尉は、その手記の中で「最高のクリスマスだ...
サメの専門家に“捏造”がバレてしまった「アンブロークン」
- 2015/05/17
- 16:28

前回、このブログで、科学記者のケビン・ローラーが、アンブロークンの著者、ヒレンブランドに対し「科学的にあり得ないことを捏造することに怒りを感じている」と述べていると書いた。今回はその記事の全文を紹介したい。KEVIN LOLLAR, Reporter, scientist question best-seller "Unbroken" ケビン・ローラー「科学記者、科学者、ベストセラー“アンブロークン”に疑問を呈す」私は、環境問題や科学の記者として、作家が科学的に...
マレー沖海戦で英国から絶賛された日本海軍航空隊の勇士たちを、非人道の極みとして描く「アンブロークン」
- 2015/05/16
- 19:01

こちらもお読み下さい。ザンペリーニたちが日本の爆撃機に銃撃されたのは事実だった第755空の激烈な戦闘の日々を描いた、村上 益夫著「死闘の大空」朝日ソノラマ4回に渡って、ザンペリーニたちの救命ボートが銃爆撃されたという話を紹介、分析してきた。そして、そこに、あり得ない話、あり得ないほど可能性が低い話が数多く存在することを指摘した。そんな指摘をしているのは私だけではない。以前紹介したように、米国の医学...
信じられない確率で救命ボートに命中し、信じられない確率で人間には命中しない日本海軍爆撃機の機銃弾【アンブロークン】
- 2015/05/06
- 14:51

こちらもお読み下さい。ザンペリーニたちが日本の爆撃機に銃撃されたのは事実だった■神の如き、日本海軍航空隊搭乗員の射撃の技量「アンブロークン」原作によると、日本の爆撃機に銃撃された救命ボートには、48個の穴が開いていたという。小さな救命ボートに48個の穴を開ける日本海軍航空隊搭乗員の射撃の腕前はどの程度のものなのだろうか。それを考察してみよう。救命ボートのサイズについて、「アンブロークン」原作では1...
【アンブロークン】救命ボートが銃撃されたという位置を、日本の爆撃機は飛行していなかった?
- 2015/05/03
- 14:17

こちらもお読み下さい。ザンペリーニたちが日本の爆撃機に銃撃されたのは事実だった前回はザンペリーニたちを銃撃した可能性のある機種を特定し(96式陸攻)、その点から作り話としか思えないアンブロークンの記述をいくつか指摘した。今回はザンペリーニたちの漂流経路に関する話である。まず、問題の海域を地図で示しておく。下の地図の赤い枠を拡大したのが、その下の地図である。太平洋上の図の赤枠部分を拡大したもの。赤線...
【アンブロークン】“あまりにも野蛮で卑劣”なのは、日本海軍の爆撃機搭乗員か、それともザンペリーニか
- 2015/05/02
- 18:37

こちらもお読み下さい。ザンペリーニたちが日本の爆撃機に銃撃されたのは事実だった前回の続き。前回の銃撃シーンの記述を読まれた方はおそらく、作り話に特有のニオイを感じたのではないかと思う。あまりにもザンペリーニが超人的すぎであり、話の展開がスリリングすぎるのである。ザンペリーニは、水も食糧もほとんどない状態で27日間も漂流し、相当衰弱していたはずだが、そんな状態で、海中で複数のサメと7度も格闘し、こと...